山中塗についてTHE STORY OF A YAMANAKA

About Yamanaka Nuri山中塗の特徴

山中塗とは、石川県加賀市の山中温泉地区で作られる漆器で、山中漆器とも呼ばれます。
県内の漆器の3大産地として「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」に並ぶ「木地の山中」。山中には古くから木地師(きじし)*が多く、挽物(ひきもの)木地*では全国一の生産量を誇ります。
木目模様を生かし、自然な風合いを表現する山中塗の大きな特徴は、木が育つ方向に器の形を取る縦木取り(たてきどり)にあります。これにより乾燥による歪みが出にくい堅牢な漆器ができあがり、椀のみならず、薄挽きや蓋物などの精巧な仕上げが可能になるのです。さらに、千筋、荒筋など木地にさまざまな模様を施す加飾挽き*により、山中塗独自の細部までこだわり抜かれた漆器が誕生しました。
*木地師:ろくろを用いて椀や盆など木工品を加工・製造する職人
*挽物木地:木材をろくろで回転させながら刃をあて、削り出して器物を作ったり装飾を施したりする技術やその製品
*加飾挽き:木地の表面に並行筋や渦巻き線などの模様を装飾する技法

職人に支えられる「日本一のろくろ技術」

山中では、木地師として初めて人間国宝に認定された川北良造氏をはじめ、多くの木地師が活躍しています。光が透けるほど薄く仕上げる薄挽き、木面に繊細な模様を刻む加飾挽きなど、職人たちの高い技術がさまざまな技法を生み出しました。挽物に使うカンナはすべて、職人が鋼を鍛造して作ったこだわりの逸品。切れ味への飽くなき追求が日本一のろくろ技術を支えています。

茶道具に代表される「高度な蒔絵技術」

蒔絵は、漆を塗った器物に金や銀の粉、色粉を使って文様を描く技法です。山中塗に蒔絵技術が取り入れられたのは江戸中期ごろ。漆下地の上の蒔絵部分だけ高く盛り上げる「高蒔絵」が有名です。漆黒色や鮮やかな朱色の漆に描かれた繊細で立体感のある蒔絵は、茶道具のほか、アクセサリーや文具にも施されています。

伝統技術を生かした「近代漆器への挑戦」

山中塗は、プラスチック樹脂の素地にウレタン塗装を施すという近代漆器の生産に、戦後いち早く取り組みました。伝統の技術で培われた高度な塗装・蒔絵技術を生かしながら、伝統的な木製漆器に留まらない、現代の生活に合ったさまざまな食器製品を生み出しています。

Our History歴史

山中塗が生まれたのは、およそ400年前の安土桃山時代。挽物の器を作って生活していた木地師が山中温泉上流の真砂に定住し、木地を挽いたことが始まりだといわれています。当初は温泉客への土産物として販売していましたが、江戸時代に入り、漆塗りや蒔絵の技術を会津や京都、金沢から取り入れて発展。加飾挽きや朱溜塗 (しゅためぬり)*などさまざまな技法が開発されました。
昭和33年頃からは木製漆器に加え、プラスチック素材を取り入れた近代漆器の生産が始まりました。今では、食器やインテリア用品、ブライダルギフトなどとして幅広い分野に広がっています。
*朱溜塗:朱漆を塗り,その上に半透明な飴色の漆を塗る技法
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